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◎割増賃金・労働時間の計算にの考え方ついて
現実的には、「本当に??」と首を傾げたくなるような事例もありますが、法律上ではこんなところです。御社に合った労務管理を考えましょう。
なお、特別に記載の無い場合、本文中の『休日』とは法定休日を指し、変形労働時間制は採用していないものとして考えています。
Q2.1週間40時間の計算は何曜日から始めるの(起算日となる)?
Q3.2つ以上の会社(別会社)に勤めている社員の労働時間の計算は?
Q4.休日に副業(兼業)として他の会社で働いた時の労働時間の計算は?
Q5.年俸制を採用している時の残業時間や休日出勤の考え方は?
Q6.遅刻した社員に遅刻した時間分延長して労働させた時、残業割増は必要か?
Q7.年次有給休暇を取得した時、取得した日は1ヶ月の残業時間(総労働時間)に
含まれるか?
Q8.徹夜の残業で次の日の就業時刻になってしまった。残業割増は何時まで?
Q9.休日の前日に残業して午前零時を回ってしまった。この時の割増は?
Q10.直行直帰の営業マン(従業員)はみなし労働時間制で問題ない?
Q11.出張した時の労働時間の計算は?
A.1分単位
●1分単位のでの賃金計算を原則としています。
『1ヶ月の勤務時間を合計時間した時に1時間未満の端数が出た場合は、それが30分未満の場合は切り捨てて、30分以上の場合は繰り上げる』ことは可能としています。
その理由として、
『常に労働者の不利となるものではなく、事務処理の簡便を目的』
としています。
気を付けるところは、『1日単位での切り上げ切り下げを認めていない』という点です。
【つぶやき】
まぁ、現実的には『・・・』難しいですよね。
1日ごとの労働時間の計算で常に切り捨てとする計算(15分以内は切り捨て等)であれば問題外ですけどね。少なくとも15分未満が切り捨てであれば、15分を超えた場合は30分へ切り上げというのならば救いはあると思いますが・・・(法的にはだめですよ。)
A.就業規則等で定めてあればその曜日から。定めていない場合は、日曜日が1週間の始まりとなる。
例えば、1週間の始まりが水曜日と定めている会社があるとします。したがって、この会社の1週間とは、水曜日〜翌週火曜日までとなります。
つまり、日曜日から土曜日までの労働時間が40時間を超えていても、水曜日〜翌週火曜日までを区切った労働時間が1週間に40時間を越えなければ残業手当は発生しません。
A.通算される
労働時間を通算することは『労基法38条』ではっきり明記されているので問題はないのですが、ここで問題となるのが『残業した時には誰が割増賃金を支払うのか?』なのです。
すなわち、『所定労働時間(あらかじめ決められた労働時間)がA社で6時時間勤務した後にB社で2時間勤務するために合計8時間である』といった社員がいる場合に、『A社で7時間勤務したので合計が9時間になった』とか、『B社で3時間勤務したために合計が9時間になった。』といった場合に誰が割増賃金を支払うのか?という問題です。
①結論:労基法での定めがない
②3つの考え方がある
3つの考え方とは以下のものです。
①法定外に使用した事業主は割増賃金を支払わなければならない。(通達)
②その労働者と時間的に後に労働契約を締結した事業主と解すべき。(コンメンタール)
③その労働者を労働させることによって残業させることとなった使用者が違反者となる。(有泉亨「労働基準法」)
もともと定めがないので我々の立場としては、このような問題が起こらないように心掛けなければなりません。どうすればこのような問題が起こらないのでしょうか?知りたい方は→お問い合わせ(笑)
この問いについては、結論が出ないのでいったんここで終了しますが、この問題については私の持論を交えて考えてみます。少々話しが小難しくなりますが、ご興味のある方はどうぞ。ご参考までに・・・
それでは一つ一つ考えていきましょう。
ケース1)所定労働が1日の中でA社で6時間、その後B社で2時間。『1日8時間』
ケース2)所定労働がA社では月〜金(1日7時)、B社日曜日(1日5時間)。『1週間40時
間』
また、いづれのケースも
(1)労働契約の順番はA社→B社とします。
(2)変形労働時間制を採用していない
(3)週の起算日、法定休日の特定は無し
とします。
①の考え方であると、
ケース1)では、
A社で7時間労働した日には、B社が1時間の割増賃金を支払わなければいけません。
ケース2)では、
B社で6時間勤務した週には、A社が1時間の割増賃金を支払わなければなりません。
②の考え方であると、
ケース1)では、
A社で7時間労働した日には、B社が1時間の割増賃金を支払わなければいけません。
ケース2)では、
A社で月曜日に8時間労働した週には、B社で1時間の割増賃金を支払わなければいけません。
ここで違和感を覚えるのはなぜでしょう。
そうなんです。①や②の考え方では、A社の指示命令で労働しているのに割増賃金を支払うのがB社であったり、B社の指示命令で労働しているのに実際の割増賃金の支払いはA社だったりするからです。
では、③の「その労働者を労働させることによって残業させることとなった使用者」という考え方はどうでしょうか。
上記①や②のような矛盾はなくなります。③は「通常は発生しないはずの残業を新たな指示命令により残業を発生させてしまった使用者に支払い義務がある。」という考えですから。
しかし、この考え方だと休日が特定されていない時に用いられる暦日・歴週的な考え方が一切なくなってしまいます(①の考え方)。すなわち「実際に行っている残業時間の労働に対して割増賃金が発生していない。」ことになってしまいます。
ケース1)で考えると、
A社で8時間労働した場合、疲労が蓄積された状態でB社で2時間業務を行うことになります。この時、実際に行っている長時間労働に対して割増賃金が発生しないことになってしまうのです。
それでは原点に戻ります。そもそも割増賃金の趣旨なんでしょう。
(イ)法定労働時間と週休制の維持
(ロ)過重な労働に対する労働者への補償 です。
この割増賃金の趣旨を踏まえて私個人の意見としては、
『もともと決まっていた所定労働時間(8時間以内)に対し、法定時間・週休制を維持できなくなるような、後から残業の元となる労働を指示命令した使用者が、過重な労働に対する労働者への補償を行う義務がある。すなわち割増賃金を支払う義務がある。』が妥当のような気がします。
あくまでも個人の意見です。(笑)
A.休日労働となる
(場合によっては、本業で働いた日が休日労働となる可能性もある)
基本的な考え方は、Q2と同じです。(労働時間を通算する)
A.通常の考え方と変わらない
就業規則等で『始業就業の時刻』『労働日・休日』『賃金規程』などの定めをもとに時間単価を計算し、法定休日に出勤すれば休日手当、残業(1日8時間、1週40時間を超える労働)をすれば残業手当を支給することとなります。
※何度か「年俸制にすれば残業は関係ないですよね?」と相談されたので付け加えますが、年俸制でも『賃金支払の原則(5つ)』は守らなければなりません。
【5原則】
①通貨払いの原則
②直接払いの原則
③全額払いの原則
④毎月払いの原則
⑤一定期日払いの原則
年俸制であっても、毎月決まった日(④・⑤)に給与を支払わなければなりません。1ヶ月分の給与は『年俸額÷12』。したがって、労働時間の計算を毎月行い、休日労働や残業があればその分の手当を加算して支給しなければなりません。
では、賞与は残業代の基礎賃金に含まれるか?
答えは、労働契約等で年俸に賞与が含まれている場合には残業代計算の基礎に含まれます。それに対して、年俸に賞与が含まれていない場合は割増賃金の基礎とはなりません。
A.必要ない
例えば、
就業時間が9時〜18時(うち休憩1時間)であった時、1時間遅刻して10時に出社した社員に19時まで労働させても残業手当は必要ありません。
※これを実労働時間主義といいます。労基法は実労働時間主義です。
A.含まれない
【残業計算に含まれない理由】
労基法は、先ほどの『Q6』でご紹介した実労働時間主義であるためです。
したがって、20日160時間という月に1日年休を取得した場合は、
『実労働日が19日(152時間)』+『年休1日分(就業規則で定めた分)』
=『1か月分の給与を支給』
すれば良く、年休1日分をあえて労働時間として参入する必要は無い。
●年休取得日の賃金は以下のいづれかです
①所定労働時間働いた場合に支払われる賃金
②平均賃金
③健康保険法の標準報酬日額
就業規則で上記①の『所定労働時間働いた場合に支払われる賃金』の規定を選択している企業で、年休取得日の所定労働時間を賃金計算を行う際に1ヶ月の総労働時間に算入している企業がありました。しかし、ここの『①所定労働時間働いた場合に支払われる賃金』とは、あくまでも賃金の支払方法を決めているだけで実労働時間に加えることを意味しておりません。
つまり、パート社員で日によって所定労働時間の違う社員がいたとします。その方が年休を取得した時の賃金として、所定労働時間が4時間の日は4時間分の賃金。所定労働が5時間の日は5時間分の賃金を支払います。という賃金の支払(計算)方法を決めているということです。
なぜこのよな考え方かというと、労基法では年休を取得した日(労働の義務を免除した日)に対し、『労働時間の保障を求めているのではなく、支払われる「賃金の保障」を求めている』、と考えた方が自然だからである。(これは私の見解)
また、「残業手当や休日手当を計算する際に年休取得日を労働時間として算入するか?」という問題については、割増賃金の趣旨が『過重な労働に対する労働者への補償』ということからも『労働者の疲労を回復するため』が趣旨の年休取得日は「過重労働の補償のための割増賃金の基礎にはならない」ことは理解できます。
【つぶやき】
もちろん年休取得日を残業計算に算入することは社員の得となりますので違法ではありません。が、知らずに大切な経費を使うよりも他の部分で有効利用するほうが企業にとってメリットがあります。
A.次の日の始業時刻まで
例1)就業時間は午前9時〜午後18時(うち1時間休憩)とします。
午前9時〜午後18時⇒『通常の賃金』
午後18時〜午後22時⇒『通常の賃金』+『残業手当』
午後22時〜午前5時⇒『通常の賃金』+『残業手当』+『深夜手当』
午前5時〜翌日午前9時⇒『通常の賃金』+『残業手当』
翌日午前9時〜⇒『通常の賃金』
となります。
例)就業時間[月〜金は午前9時〜午後17時(うち休憩1時間)、土は午前9時〜15時(うち休憩1時間)]、1週間の始まりは月曜日、休日:日曜日とします。
土曜日の業務がなかなか終わらずに、業務が終了したのが日曜日の午前2時になってしまった場合の計算を考えてみます。
土曜日)
午前9時〜午後15時⇒『通常の賃金』
午後15時〜午後22時⇒『通常の賃金』+『残業手当』(週40時間を超えているため)
午後22時〜午前零時⇒『通常の賃金』+『残業手当』+『深夜手当』
日曜日)
午後零時〜午前2時⇒『通常の賃金』+『休日手当』+『深夜手当』
となります。
※午前零時を過ぎた時点で残業労働から休日労働となりますので注意してください。
A.実態により判断
『直行直帰=みなし労働時間制(事業場外労働)』とはならない。
◆事業場外みなし労働は、以下の条件を両方とも満たす時に適用できます。
①事業場外で業務に従事
②使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間を算定することが困難な業務
したがって、使用者(上司)からの具体的な指揮監督下にある場合は、たとえ業務が事業場外でも『事業場外みなし労働』の適用はありません。
例えば、
携帯電話で随時上司からの指示を受けて業務したり、業務終了の指示を受けるまで業務を継続する場合は『事業場外みなし労働』の適用はありません。
また、営業マンでも社内での労働時間はみなし労働時間に含まれません。
例えば、
営業から帰って社内で事務作業をしたとします。この時、『事業場外みなし労働が8時間』であれば、社内で労働した時間は全て残業時間となります。(変形労働制なしの場合)
考えてみれば当たり前ですね。
事業場外みなし労働時間は、事業場内での労働は対象外となります。
【つぶやき】
とは言いながら、営業マン時代は『労働時間より結果』でした。会社での自分の居場所を確保するために休みもなく営業をしていたことを思い出します・・・
A.労働時間が算定できる場合⇒実労働時間で賃金計算
労働時間が算定できない場合⇒所定時間働いたものとみなして賃金計算
ここでよく問題となるのが、「出張=残業は無し」と思っている方が意外といるということです。
事業場外みなし労働では、『労働時間の算定ができないこと』が絶対条件です。したがって、出張中でも指示命令を受けながら業務を行ったり、業務の開始や終了時に上司の判断を得なければならない場合などは、出張中でも労働時間の算定はできると判断されます。
また、みなし労働時間(事業場外労働の部分)が法廷労働時間を超える場合は「労使協定の締結→労基署への届出」が必要となります。
A.断続労働の許可を得ていれば労働時間等の適用除外となる
許可を受けていなければ、原則(通常)の考え方。(労働時間=拘束時間−休憩時間)
●断続労働に従事する者とは、『休憩時間は少ないが手待時間が多い者』のことです。
断続労働の許可を得れば労働時間等の適用除外(縛りが無くなる)となります。
労働時間等とは、
①労働時間(1週40時間、1日8時間)
②休日(1週間に1日)
③休憩
これらのこと。(深夜手当や年休付与は除外されません)
どういう事かというと、『残業割増や休日割増が発生しない。』という事。
また、断続労働は実労働が8時間を超えるようであれば許可されませんが、「勤務が所定労働時間を超えて労働する場合の賃金は当事者の定めによる。」(通達)とあります。
※ただし、断続労働であっても就業規則での始業時刻・終業時刻は決めなければいけません。
【つぶやき】
私の立場としては、
・会社側の方には『許可、就業規則・労働契約の整備』
・労働者の方には『会社が許可をもらっているかの確認』
をまず最初にすすめます。
A.残業割増は発生しない
ただし、休日労働が深夜時間(午後22時〜午前5時)と被った場合には、『休日割増』+『深夜割増』となります。
『残業割増』+『休日割増』となることはありません。 ※参考→Q9へ
A.対象期間の初日の曜日
条文や通達等で明確に示されていませんが参考にして下さい。
【理由】
一年単位の変形労働時間制で対象期間が3ヶ月を超える場合は、
①『1週間の労働時間は52時間が上限』
②『1週間の労働時間が48時間を超える週は連続3週以下』
という決まりがあります。 これを基に考えていきます。
この時の52時間や48時間の起算日は、
『週歴ではなく、対象期間の初日の曜日を起算日とする7日間』(通達)
とされています。
これは、「対象期間の初日が水曜日であれば、水曜日から翌週火曜日までの1週間の労働時間を累算しなさい。」ということです。
この『1週間52時間』や『1週48時間連続3週まで』の定めは、いくら変形労働制で対象期間(一定期間)の平均が40時間以下であったとしても、対象期間の中で労働時間が偏りすぎては労働者へ負担が大きくなる(過重労働となる)ことを心配した結果の定めと思われます。
それでは時間外割増(残業)の趣旨なんでしょうか?
それは、『過重な労働に対する労働者への補償』
なのです。
したがって、『1週間52時間』や『1週48時間連続3週以下』の起算日が、歴週ではなく対象期間の初日と明確に置かれている以上、週の労働時間の計算は対象期間の初日から行わなければいけません。(歴週で行われるべきではない)
※休日について、
一年変形では、『連続勤務は6日まで』とされています。これも、対象期間の初日から起算して『連続6日』と考えます。
歴週で考えた場合、対象期間の初日(1日)が月曜日であれば、12日(金)まで働けることになってしまいます(13日に休めば良いことになる)。特定期間でもないのに、おかしいですよね。
【つぶやき】
上記は全て私の考えです。
違う考えの方は教えて下さいね。
担当: 伊藤(いとう)
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